2026/07/31
読者の声に弱い編集者
中小出版社で働く編集者にとって、大手でしか書かないベストセラー作家へのアプローチは至難の業だ。連絡先すら分からず、執筆依頼を出しても99%断られる。
当時の私は、営業から出版部へ異動したばかりの遅咲きの新人。知名度の低い自社で、新規開拓に挑んでは玉砕する日々だった。
そんなある日、読者から「持ち込み原稿」が届いた。基本は不採用にするものだが、「気になる本のあとがきを見ると、いつもあなたの名前があります」という手紙の一文に心を掴まれ、断れずに会ってしまった。
出版には至らなかったが、原稿の感想を丁寧に伝えた。この経験で気づいた。編集者は読者の熱意に弱い。そして、売れっ子作家の本のあとがき(謝辞)には、必ず大手の担当編集者の名前が記されている。
他社の編集者であっても、一人の読者として真摯に手紙を書けば、きっと届くはずだ。
私は会いたい作家の担当編集者へ手紙を書いた。謝辞から部署名とフルネームを割り出したのだ。後日、その編集者から連絡があり、作家を囲む飲み会に誘われた。一度懐に入ってしまえばこちらのものだ。
この「謝辞から担当者を探す」方法で、私は新たに2人の作家を開拓し、重版を重ねることができた。
