2026/09/19
終の棲家
池が干上がるとき、水は端から減り、魚は中心へ集まる。地方のコンパクトシティ化もこれと同じ構図だ。
中山間地から市街地へ、そして最後は施設へ。人が中心部へ吸い寄せられる裏側で、地域の集落は静かにその役目を終え、干上がっていく。
象徴的なのが高齢者の孤立と移動だ。鳥取市の65歳以上の一人暮らしは1万5000世帯を超えた。
若い世代が教育や利便性を求めて市街へ移り、残された親も高齢化に伴って呼び寄せられ、実家は空き家となる。
その移動の最終着陸地となるのが介護施設だ。「子どもに迷惑をかけたくない」という切実な願いを叶え、24時間の安心が得られる場所は、今や社会の「最後の受け皿」である。
住み慣れた土地を離れる葛藤はあっても、他者との関わりの中で活力を取り戻す高齢者も少なくない。
地方が縮む現実を止めることは容易ではない。だからこそ、周辺部が干上がっても、中心にだけは命を繋ぐ水が残らなければならない。
困窮した命を包み込む「最後の池」である福祉の基盤を、私たちはより深く、大きく守り育てていく必要がある。
