2026/05/12
ビジネス温故知新
西宮市にあった松下幸之助さんの自宅「光雲荘」で、京都の古美術商「善田昌運堂」の店主と出会い、その後、店を訪ねる機会を得ました。
私は約束の一時間前から、店近くの喫茶店で待機していました。案の定、店先には迎え水がなされ、湯も沸かして待っていてくださったのです。
一服のお茶をいただいた後、店員を呼び、私の目の前に二つの茶碗が置かれました。「中国の北宋時代、皇帝が愛した青磁の茶碗と、桃山時代に作られた鼠志野。どちらが高価か」と問われました。
前者は軽やかで、透けるような繊細な青色の茶碗。一方、後者は無骨で分厚く、鼠色の土肌に白い釉薬が垂れた風情の茶碗でした。
そのとき鼠志野の底部に「糸切り」の跡を見つけました。萩焼などに見られる「切り高台」で、庶民の器の印です。
正解は、皇帝の青磁が2,000万円、鼠志野が2億円。私は見事にはずしました。この違いを店主に尋ねると、「皇帝の茶碗は口が欠ければ使えません。美人は三日で飽きます」との答えでした。
古美術品は常に品不足であり、店に置いてあるのは大福帳で、作品はお客様の家にあります。店主はその情報を握っているのだということも知りました。
