中村ゆきと未来とっとりプロジェクト 代表

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2026/08/09

鯨が消えた入り江

鯨が消えた入り江

「文通」はもう死語に近い。私も人生で二人の女性と手紙を交わした。  
 一人目は中学時代、スポーツ少年団で知り合った県内の同級生。二人目は大学3年の時、語学研修で行った台北で出会った地元の女子大生だ。どちらも3年近く続いた。そして一度だけ、実際に会いにも行った。
 やめてしまった理由はそれぞれ違う。中学の頃は、手紙の中の“理想の自分”と現実のギャップに耐えられなかった。将来の夢を語るほど、彼女を失望させるのが怖くなった。  
 大学時代の彼女には、社会人になり、台北へ心の内を伝えるために向かったが、既に約束の人がいた。
 文通の魅力は、速さではなく密度だ。手書きの温もり。返事を待つ数日のワクワク感。文を重ねるごとに相手の中で育つ理想像。  
 だからこそ映画にもなる。『Love Letter』(1995)『イルマーレ』(2000韓/2006米)『ジュリエットからの手紙』(2010)。手紙は物語になる。
 先日、市内のシネマドアで封切られた映画『鯨が消えた入り江』を観た。スクリーンに広がる美しい台湾の海を見ながら私の文通の思い出と重なった。  
 来年こそ、私も鯨が消えた入り江に旅したい。