2026/07/30
近火御見舞
新人の頃、お得意先の書店の近所で火事があり、上司から「一升瓶を2本持ってお見舞いに行きなさい」と指示された。
当時は日本酒とお見舞いが結びつかなかったが、江戸時代には消火や片付けを手伝ってくれた人々に、見舞い品の酒をその場で振る舞う助け合いの文化があったのだと後に知った。
時は流れ、台風や地震が頻発する現代では、水に濡れた書籍の請求を免除するなど、時代に応じた実利的なお見舞いへと変化し、一升瓶を担いでいくような時代は終わりつつある。
このように、相手の状況に寄り添う支援の形は様々だ。災害時に企業が物資を届けたり、SNSで現地の様子を伝えたりする表立った活動がある一方で、分野を問わず、人知れず行われる支援もある。
例えば、先日大腸がんで死去したミステリー作家の東野圭吾氏は、スノーボーダーとしての顔もあった。2018年には自ら発起人となり、賞金総額日本一を掲げるスノーボード大会「SNOWBOARD MASTERS」を創設。私財を投じて開催し、競技の発展に大きく貢献した。
災害さえも自己アピールに利用されがちなSNS時代だからこそ、遠く離れていても相手を真に思いやる想像力が大切だ。全国に取引先を持つ企業は、あるべき支援の形を常に考える時代に突入した。
