2026/08/07
電話の先に、人がいる
PHP研究所の「心の電話相談室」は1987年に始まった。現在は「PHP友の会」の活動として、ボランティアの相談員が電話を受けている。
私が月刊誌『PHP』編集部にいた頃、金曜の終業間際に必ず電話が鳴った。「ハナキン」のお誘いの電話ではない。受話器の先には、悩みを抱えた読者がいた。
30歳になったばかりの私に、70代の父親は「娘が結婚しない」と絞り出すような声で訴えた。カウンセラーの資格も人生経験もない。できるのは、ただ話を聴き、相槌を打ち、寄り添うことだけだった。30分を超える通話を終え、受話器を置くと現実が戻ってくる。あの重みは今も忘れられない。
当時の社長の判断で、すぐに開設したこの窓口が、これまでどれだけの人の気持ちを軽くし、命を支えてきただろう。
時代は変わった。SNSやLINEで繋がれる一方で、孤独は深くなった。だからこそ「声が聞ける場所」は尊い。
鳥取市役所にも、「心やメンタルの悩み」を無料で相談できる専門窓口がある。まずはそこに電話してほしい。
本当は、気軽に話せる友人や隣人が一番だ。誰もが「話を聴く人」になれる社会。そんな温かい繋がりと、電話の先に、人がいる安心を次の時代にも残したい。
