2026/09/22
犬去りて、豚来たる
鳥取市に来てから捨て犬や野犬に会ったことがない。周辺の中山間地でも首輪なしで歩く犬は見かけない。代わりに住宅地へ頻繁に出没するのは、シカとイノシシだ。
昔、里山には野犬の群れがいた。彼らがシカやイノシシの子を襲い、その数を抑える役割を担っていた。しかし野犬が姿を消したことでシカの個体数は爆発。鳥取県の捕獲数は10年前の2倍にのぼる。里山の生態系を統治していた頂点捕食者が消えてしまったのだ。
では犬はどこへ行ったのか。今は家の中で大切に飼われている。しかもぬいぐるみのような小型の洋犬ばかりだ。これでは到底、獣害には太刀打ちできない。
増えすぎたシカが森の植物を食い尽くした結果、山が荒れ、今度は餌を求めてサルやイノシシ、クマまでが里に下りてくるようになった。食物連鎖の歯車は完全に狂ってしまったのだ。
戦後の台湾で、国民党支配の交代を皮肉った言葉に「犬去りて、豚来たる」がある。イノシシは文字通り「野の豚」だ。現代の鳥取の里山もまた、守り神だった犬が去り、豚(イノシシ)が押し寄せてきている。
