2026/06/04
本物と出会う
高校1年の放課後、「文藝春秋講演会」目当てに市民会館へ足を運んだ。講師は『ムツゴロウの博物誌』で人気の畑正憲先生。終演後、出待ちで手に入れたサイン本一冊が、まだ何者でもなかった高校生の進路を、少しだけ前に押してくれた。
高校時代、夢中で読み耽った加藤諦三先生の「青春日記シリーズ」。版元の秋元書房が倒産した直後、編集長だった私はPHP研究所で復刊を提案し、加藤先生と仕事をご一緒できた。かつての読者が、憧れの作家と原稿をやり取りする立場になる。出会いと縁が、夢を現実に変えてくれた。
雑誌編集者時代、熊本県知事・細川護熙氏に密着取材した際、熊本県のユニークな「講演企画」を知った。毎月、東京から著名人を招き、県内の観光地を楽しんでいただく代わりに県民向け講演を一回。帰京した彼らがメディアで熊本を語る“人による発信”。今でいうインフルエンサーだった。
『気配りのすすめ』鈴木健二さんもその一人。後に熊本県立図書館長として現地で生涯を閉じた。
元巨人・堀内投手が全盛期に浜村温泉で自主トレをした時も、集まった野球少年の中からプロが生まれたと聞く。
青少年が「本物」と出会う機会は、その後の人生に計り知れない影響を与え、選択肢を広げる。このまちの子どもたちには、そんな出会いが必要だ。
