中村ゆきと未来とっとりプロジェクト 代表

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2026/05/11

家賃滞納と信用の価値

家賃滞納と信用の価値

編集長時代、松下幸之助さんの妻・むめの夫人の書籍を担当したことがあります。

かつて幸之助さんが二股ソケットの開発に打ち込んでいた頃、材料となるベークライトの購入資金が嵩み、ついに家賃を滞納する事態に陥りました。しかし、むめの夫人は家賃が払えないことを隠さず、自ら大家さんのもとへ相談に赴きます。大家さんは夫人の律儀で誠実な態度に感銘を受け、家賃の支払いを快く猶予してくれたといいます。

そこには確かな理由がありました。むめの夫人は、たとえば家賃の支払日が毎月25日であれば、それまでは必ず期日より前に支払いを済ませていたのです。

お金というものは、支払日を境にその「価値」が変動します。友人に1万円を貸した際、返済日の3日前に返ってくれば1万1千円ほどの価値を感じ、逆に期日を過ぎてから返されると、9千円程度の価値に目減りしたように感じるものです。これこそが「信用の価値」ではないでしょうか。

のちに巨大組織となった松下電器グループでも、支払日の前日には必ず入金が行われていました。それは取引先だけでなく、社員の給与も同様でした。

翻って編集者の世界では、作家に締切を破られることを見越して、あらかじめ「サバを読んだ締切」を設定するのが常でした。それだけに、締切前に入稿してくださる作家さんは、まるで仏様のように神々しく感じられたものです。